YOJO FES 報告 ~感情を俯瞰する力~
 
															中医学と心理学が示す「心身のバランス」
10/25 軽井沢芸術倶楽部での「YOJO FES」での講演。
「ココロ(七情)とカラダの関係」についてお話ししました。
中医学の世界では、怒り・喜び・思い・憂い・悲しみ・恐れ・驚きという「七情」が、身体の働きと密接に関係していると考えます。
感情は一瞬で消えるものではなく、体の反応としても現れます。怒りで肩がこる、悲しみで呼吸が浅くなる──それは誰もが経験する自然な現象です。
しかし現代社会では、感情を「抑える」ことが美徳とされがちです。
けれど、抑えることは決して整えることではありません。
私がお伝えしたかったのは、「感情を俯瞰してみる」という視点です。
たとえば、何かに強く反応したとき、「なぜ自分は今、これほど動揺しているのだろう」と立ち止まってみる。
そのとき、自分の感情の奥には“満たされていない何か”が見えてくることがあります。
心理学者マズローは、人間の欲求を「生理的欲求」から「自己実現」さらには「自己超越」までの階層で説明しました。
安心したい、認められたい、成長したい──私たちの感情の多くは、この階層のどこかから生まれています。
自分の“立ち位置”を意識することで、感情の意味が見えてきて、冷静に受けとめやすくなるのです。
中医学では、感情の乱れは「気の巡り」の滞りとして身体に現れると考えます。
最近では、心理的ストレスが自律神経やホルモンバランスに影響を与えることも、科学的に明らかになっています。
つまり、「心の状態が体に影響する」という古くからの知恵が、現代医学でも裏づけられつつあるのです。
ここで大切なのは、“感情を否定しない”という姿勢です。
怒りや悲しみを「悪いもの」と捉えるのではなく、「自分の心が何を求めているのか」を知る手がかりとして受けとめる。
それが「俯瞰する」ということ。
この瞬間、交感神経の興奮がゆるみ、呼吸が深くなり、筋肉の緊張もやわらぎます。
心が整うと、身体も静かに整っていく。まさに“心身一如”の状態です。
講演後、多くの方が「自分の中が整理された気がする」と話してくださいました。
感情を俯瞰することは、感情を抑えることとは違います。
それは、自分を理解し、受け入れるプロセスです。
心が静まると、思考も明晰になり、身体のリズムも穏やかに整っていきます。
中医学の智慧と心理学の洞察は、どちらも「人は心と体の両面で存在している」という真理にたどり着きます。感情を俯瞰する力とは、心身をひとつの生命として見る力。
その目線を持てたとき、私たちは健康という言葉の本当の意味を、静かに理解できるのかもしれません。
								 
															 
															会場では養生食も提供されていました 心身ともに癒されるすばらしいFESでした
 
															 
															 
				